真っ暗な闇の中で、私は早織と向き合う。

どうやら、私は夢を見るみたいだった。



『湊、大切な人ができたんだね』


「うん、私……大切な人ができたよ」



早織の、優しい眼差しに恥ずかしがることなく、素直にそう言えた。



『ねぇ湊、それならもう……私は必要ないね』


「……え、何言ってるの早織」



突然、何を言い出すの早織。

俯いた顔からは表情が読み取れない。

だけど、とてつもなく不安になった。



「ねぇ、早織……あっ」




不安で伸ばした手。

それは、早織の体をすり抜けてしまう。



『私は、湊の幻覚……分かってるでしょう?』


「でもっ、早織はちゃんとここに……」


『もう、私の役目は終わったんだよ……』




そんな言葉を残して、早織は霧のように闇に溶ける。



――ドクンッ。

嘘……嘘、嘘、嘘っ!!

早織が消えるなんて、そんなはずない!!




「そんなのっ……嫌っ……消えないで、行かないで早織っ!!」



泣き叫ぶ声は届かない。


闇の中で取り残された私は、ただひたすらに、助けられなかった命を思って泣いた。