「今年も春人さんと野球行くんだね」


春兄との野球観戦を明日に控えた金曜日。


恒例化を知っている充希にその事を伝えた。


「うん、河西くんがいいよって言ってくれたんだ」


「へぇー、寛大な彼氏ね」


「だろ?もっと褒めていいぞー」


充希はさっきまで使っていた理科の教科書で、河西くんの頭を勢いよく叩く。


「いって!!お前教科書の使い方間違ってんぞ!!」


「うっさいわね。なら私が新しい使い方開拓してやんよ。ってかさ、二人はまだデートとかしてないの?」


私と河西くんを交互に見ながら言う。私たちは顔を見合わせ、口を合わせて『まだ』と答えた。

一緒に帰ったりはしてるけれど、デートはないなぁ。


「なら今日帰りデートして来い。藍は明日春人さんとデートなんだから。彼氏が先越さんでどーする」


いや、春兄とは別にデートじゃなくて…家族行事のようなものだ。お互いそのような気はないのだから、デートとは言わないはず。



「おっ、デートするか?鵜崎」


「デート…したい!!」



こうして、河西くんとの初デートが決まった。言われてやるデートをデートと言うのか際どいラインだけれど。