---春は嫌いだ。


みんなは春の温かな陽気、暑過ぎず寒すぎずな気候が丁度いいから好きと言うけれど。

出会いの季節でもあるが、別れの季節でもある、この季節。

そして何より...




「ぶえーっくしゅん!!!」


「...花粉症って大変ね、藍」



そう、花粉症の私にとってはこの季節は大敵なのだ。


目はかゆすぎて赤くなるわ、鼻水は止まらないわでいいことなし。


くしゃみの予感がすると慌ててハンカチを取り出すが、たまに間に合わないこともあり、そんな時は手で口を押さえてすぐに手を洗いにいく。


マスクをすればいい話だが、唾で濡れるのが嫌なのだ。くしゃみをする度に取り替えるわけにもいかない、色々と面倒な季節だ。


そんな謎なこだわりを持つ私は鵜崎藍(ウサキアイ)、どこにでもいるような普通の高校生。


彼氏はいたことないけれど、人並みに恋もしてきたし、片手で数えられるくらいだが告白もされたことがある。


なのになぜ彼氏を作らなかったのかって?


私は恋に奥手なのだ。


自分が相手を好きじゃないと付き合うことができない。


付き合っているうちにだんだんと...という概念がそもそもない。


これを周りにいうと、口を揃えて言われるのが『あんたもったいない』だの『そんなんじゃ一生彼氏なんてできないよ』だの。


彼氏がいるのってそんなにいいことなのか?


こんなこと言ったら言い訳に聞こえるかもしれないけれど、私は自分自身を大切にしたい。