chapter3 少女の剣と温かい手のひら


翌日。フェリチタはルウリエにレイオウルの昔話をせがんだ。正確には、彼女が曖昧だと言った、その辺りの話を。

「急にどうされたのです?ご興味はなさそうなご様子でしたのに」

「城内の思い出なら、もしかしたらそこに行けば思い出せるかもしれないでしょ?……私も、そろそろ散歩くらいしたい気分だったから」

途端にぱっと顔を輝かせるルウリエ。

「フェリチタ様もご一緒に行かれるのですか!もちろん、すぐに向かいましょう!お召し物を準備しなくてはいけませんね!」

「えっ、別に、」

このままでいいんだけど、とその声は彼女には届かず、あれよあれよという間に全身完全装備にされた。気が変わらないうちにということか、すぐに部屋から追い立てられる。

「フェリチタ様とお散歩だなんて!実現するとしてももっとずっと先になると思っていました。しかも私の思い出のためだなんて。本当にフェリチタ様はお優しいですね」

本当にとても嬉しそうににこにこと笑いながら隣を歩くルウリエにフェリチタの胸がズキリと痛んだ。

(ごめんなさいルウリエ。違うの、優しくなんかない。私が知りたくなったの、もっとあの人について。部屋で悶々と考えるよりは、動く方が良いかなって思っただけなの)

どうしたものか、部屋にいるとルウリエと話すぐらいしかやる事がないので、暇があるとすぐにレイオウルの事を考えてしまうのだ。それは如何なものかと思っていたのだが、昨日の話を聞いた事を幸いとルウリエの話を口実に使ってしまった。