「律(リツ)、朝だよ」

「んー」


まだベッドの上で布団にくるまっている彼の体を優しく揺らす。


「律ってば」


揺らせば揺らすほど布団に潜っていく体を見て、思わず長い溜め息をついた。


なかなか起きない律をどうにかして起こすのが、ここ最近、悪い意味で朝の日課になっている。


私と律は小さい頃からの幼馴染。
幼稚園も小学校も中学校も高校も大学も、とにかくずっと一緒。
でもこれは私が合わせたわけではなく、多分、律が合わせてくれた。
高校も大学も、私より遥かに頭の良い律なら、もっともっといいところに入れたはずなのに、律は私に合わせて学校を決めていた。
「別にお前に合わせたわけじゃないし。無理やり頭良い学校行って、死ぬほど勉強すんのが嫌だっただけ」って律は言うけど。
でも、親や先生の猛烈な反対を押し切ってまで、大幅にレベルを落とした学校を受験するなんて。
死ぬほど勉強したくないなら、少しレベルを下げればいいだけなのに。
なのに。
そこまでして、律は常に私の側にいる。


そして、学校を卒業した今も。


「りーつ!会社遅刻しちゃうよ!」

「るせーな……起きてるっつの」

「じゃあベッドから出て!」

「あと5分したらな」

「だめ!!!」


大学を卒業して社会人になった私たちは、晴れて恋人同士になった。
律に告白されたときは正直すごく驚いた。
私はずっと律を幼馴染として見てきたから、急に恋人に見ることなんて出来ないと、最初は断ったものの、今まで生きてきた人生の中で、律より好きな男の子がいなかったから(律が近くにいすぎて他の男の子とあんまり話したことがないだけなんだけど)、多分この先も現れそうにないと思い、告白にOKを出した。


そして今、某有名大手企業に就職した律と、保育士になった私は、小さなアパートで同棲をしている。