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それから二日後、ランスは約束通りに屋敷へとやってきた。


今日は応接室ではない、私の部屋にいる。

どうやら父が私の部屋へと行くように案内したらしく、扉を開け目の前にランスがいたときは、腰を抜かしそうになるほど驚いてしまったのはここだけの話。


婚約者になるのだし(……ってまだ自分は認めていないけど)、部屋に招くのは特別おかしいことではないが、でも部屋に通すなら通すで構わないから前もって話をして欲しかったと、少し父を恨む。

「もう体調は回復したのか?」


ランスは部屋に入るなり、気遣うように聞いた。

「ええ、お陰様で。心配していただきありがとうございます」

私は引き攣った笑顔を浮かべながら、言葉を返す。


でも私が熱を出したのは、そもそもランスが原因なわけで。

あんな口づけさえしなければ、ここまで寝込む必要なんてなかったのに、と思う。


しかしながら、そんなことをランスに言ったところで、『経験のないお前が悪い』などと言われて一蹴されるのが関の山だ。

だから仕方なく、心の中でそう呟くしか方法はない。