「こんにちは、愛しの婚約者よ。……おや、今日も相変わらず不機嫌だな」


宣言通り二日後、アーチャー様は屋敷にいらっしゃった。

部屋に籠城しようかと企みもしたけれど、父に『出迎えろ!』と無理矢理部屋から出され、結果屋敷の入り口でアーチャー様を待つ羽目に。

爽やかな笑みを浮かべるアーチャー様に対し、私はむすっとした表情で出迎える。

別に来て欲しいと思っているわけじゃないし、変に笑顔出しちゃってあっちが勘違いしても困る。


そんな私に対して彼が言った言葉が、先程のものだ。


まあ、ね。

睨んだところで彼には、これっぽっちもダメージはないのだけど。



だってそう言いながらも彼の顔は綻んだままだし、言葉のトーンもどこかしら明るげ。

逆に私のその不機嫌さを見て、楽しんでいる節もある。



「ごきげんよう、アーチャー様。お忙しいのに、律儀にいらっしゃって光栄ですわ」

「約束は必ず守る主義なんでね。特にお前との約束であれば、何を犠牲にしても守り通すさ」



お、お前!?

なにちゃっかり私の事を"お前"なんて呼んでるの!?


「馴れ馴れしく"お前"だなんて、呼ばれるほどの仲ではありませんけど?」

「いずれ気にならなくなる仲になるさ。お前がどう足掻いてもな」