翌日の朝はやはりと言うべきか、憂鬱だった。

自分がしてしまったことを思い返しては、幾度となくため息が漏れる。学校へ向かう最中、通算五回目のため息をつくと、ついに蓮様から「うるさい」と叱られてしまった。

校舎が見えてきたところで見覚えのある人影を発見し、思わず固まる。


「……蓮、」


校門前で待っていたのだろうか。こちらに気が付いた椿様が、体を向ける。
その瞬間、私は彼の元までひた走り、地面に膝をついた。


「椿様! 昨日は大変申し訳ありませんでした!」

「え――百合ちゃん、ちょ……待って、顔上げてっ」


荒々しく両肩を掴まれ、そのまま強制的に椿様と目が合う。彼の左頬には、昨日私が作ってしまったであろう痕がうっすらと浮かんでいた。


「ああああ椿様のお顔に痣が! 本当に申し訳ございません、どうお詫びしたらいいか……!」


やばい。消される。何か凄まじい勢力に抹殺される。
圧倒的に自分のせいだというのに、今度は恐怖で震えてしまうのだから情けない。

椿様は改めて私の肩を揺さぶると、「落ち着いて」と声を掛けた。


「百合ちゃん、大丈夫。もういいよ、もう謝らなくていいから」

「そっ、それは、『お前はもう死んでいる』的な何かでは……」