扉を開けた先にいたのは、まさしくお嬢様。

ピンクのフリルがスカート部分を彩り、散りばめられたグリッターが照明のもとで眩く光を放つ。
腰まであるブロンドの髪がふわりと舞って、濃紺の瞳が私を捉えた。


「君は……」


艶のある薄い唇が動く。

視覚で与えられる情報すべてが、きらきら輝いていた。目の前の「少女」に目を奪われる。逸らせない。
まるで、魔法にかけられてしまったみたい――。


「お初にお目にかかります」


自身の胸に手を添え、心音を宥めるようにゆっくりと発声した。
数歩近付き、跪いて名乗ってから、興奮冷めやらぬままに私は告げる。


「早速ですが、――私にお化粧をさせて頂けませんか?」

「………………は?」


この時、自分が出会った「お嬢様」の正体をもっと早く知っていれば。
そんな後悔はきっと、後の祭りなんだろう。

でも、ここへやって来たことは後悔していない。

自分のことは自分で決める。だって私の人生なんだから――。