旅館に着くと、仲居さんに案内されて部屋に行った。

部屋に入ると、広いベランダがあり、そこからきれいな海が目に飛び込んできた。

『今夜はこちらから花火がよく見えますよ。』

仲居さんはそう言い、部屋の説明をすると、浴衣を取りに部屋を出て行った。

『わぁー、すごい!』

早速ベランダに出たひとみはそこから見える景色のおかげか、さっきまでの寝ぼけ眼はどこへやら、すっかり復活したようだ。

「今夜が楽しみだな…」

俺はベランダから海を眺めるひとみの肩に手を回した。

『うん…』

ひとみは恥ずかしそうに、俺の腰に手を回した。

しばらくして、仲居さんが浴衣を持って再び部屋を訪れた。

この旅館では、女性の浴衣が何種類か用意されていて、女性客が好きなものを選べるようになっていた。

『慎吾、どれがいいかな?うーん、迷うなぁ…』

ひとみは、さんざん迷って、紺地に小花が入った落ち着いた感じの浴衣に山吹色の帯を選んだ。

時計を見ると4時半を過ぎたところ、夕飯までにはまだまだ時間がある。

「ひとみ、風呂…入るか…?」