柔らかな雨の音が降る、春先のこと。
それに耳を傾けながらイギリスは微睡んでいた。
「イング」
どこからか優しい声が自分を呼ぶ。
だがそれは、雨に沈んでゆくイギリスの意識を引き戻そうとはしていない様だった。
「イング、もう寝てもうたん…?」
さら、と頭を撫でられ、額にキスを落とすその人は、イギリスの恋人。
褐色の肌に柔らかな赤茶の髪、左目の黒子が印象的なイベリァの片割れ、ポルトガルだ。
「ふふ、かわええなあ…ぐっすりや」
なおもイギリスを撫で続けるその手が、悪戯にほっぺをつまむ。
「むにむにー、むにむにー…起きへんなあ」
まるで構って欲しいとでもいう風に、ポルトガルはイギリスへの悪戯を続ける。
まあ、いくら弄られてももうイギリスは夢の中にいるわけだし、しばらくは起きる事はないのだが。
「…ほんまに寝てもうたん?なんや、寂しいなぁ……」
ぐすん、と泣きそうな表情をしてイギリスを見つめる。
「まぁええわ。やったら俺も一緒に寝よー」
あらかじめ持ってきておいた毛布をイギリスにかけ、自身ももそもそと潜り込む。
「あったかいなぁ、おやすみイング……」
しとしとと降る雨の中、二人は眠りについたのだった。