翌朝、船は南の都、朱里の港に着いた。

船長と数名の船員に「行ってらっしゃいませ」と見送られ、船を降りた。

船は折り返し王都に戻り、俺たちは旅回りの楽団として視察をする。

「行くぞ。此処からは敬語も敬称も無用、良いな。……言葉使いも変えなきゃな」

「好きにしておくれ。細かいことはごめんだね」


叔母上は頬に掛かった銀髪を掻き揚げ、気怠げに零した。

「市場へ行ってみるか、人の集まる場所だから情報収集できるだろ」

紅蓮は心なしか、顔がニヤついている。

王都では騎士たちの間で時々、紅蓮の日常が話に上ることがあった。

普段は鍛錬の時の凛々しさや厳しさとは違い、チャラいのだと聞かされている。

そう言えば、占い師の女性の際どい服装にも平然としていたことを思い出した。

いずれにしても、だれかれ構わず気さくに話せるのは良いことだと思いつつ、不安も感じた。