王子を起こしに行くと、目を擦りながら起き上がられた。

「王子、あの……持っていてください」

着替えを済ませ部屋から出て来られた王子に、遠慮がちに、紺色の生地に金糸で刺繍を施した巾着袋を差し出した。

「御守りか、昨日あれからお詣りに行ったのだな。ありがとう、大事にする」

結わえた頭を王子の掌がそっと撫でた。

「行こうか、紅蓮と叔母上が待っておる」

顔が火照るのを見られたくなくて、俯いて歩く。

昨晩、就寝前に、ハーン殿が王子の診察をされたことを紅蓮殿から聞いた。

昼間、市中を歩き回ったことが思いの外、足に負担をかけていたらしく、ハーン殿が湿布薬をこれでもかと塗られたのだという。

更にハーン殿は足に負担をかけないようにと、ご丁寧にテーピングまでした挙げ句、調子が良くても松葉杖を使用するよう、王子を叱責されたのだと。