毎日がただ憂鬱なまま過ぎて行く。

鍛錬に出るものの納得がいかず、かといって満足に体は動かず、凛音に宥められてばかりいた。

闘神祭は南の都、桜琳を治める貴族の息子が雇った闘技奴隷が優勝した。

当の貴族、風早殿は温厚で人望も厚い人物と聞く。

姉上の婚約者には適していると思う。

望月になれば龍神の力も満ち、体力も完全に回復し身体の不調も治まると信じたかった。

日一日と満ちていく月を祈る思いで見つめながら、不安は日々募っていく。

共に鍛錬する騎士たちの間でも、俺が鍛錬を抜けると、俺の不調が話に上っているという。

朔の日、王宮の危機を救った時の様子が、まるで武勇伝のように宮中内で語られ、凛音から「王子は英雄と言われている」とも聞いた。

「松葉杖をついた英雄などいない」

俺は勾玉を手に取り、凛音に愚痴った。