半月前。

両陛下の命を受け、葵王子と騎士団指揮官クレイグ氏、王子の叔母上瑞樹さまと共に、西の都にある幾つかの市や村を視察した。

市場の様子、地方からの移民、大道芸人で賑わう街を視察し、各役所や施設で役人の話を聞き、「我が国の統治は上手くいっているのだな」と王子は安堵し、笑顔を見せた。

だが、西の外れの村、江藍を訪れ、王子は顔を曇らせた。

数年前までは緑鮮やかに潤っていた畑や満々と水を称えていた湖が、見るも無惨に枯れ果てたさまは驚きを通り越し、言葉さえ出なかった。

「何故だ」

砂塵舞う閑散とした村を歩き回り、門戸を叩くが人が居る気配さえない。

村の外れまで歩き、漸く出会った若い農夫は身分を明かして話しかけた王子を一瞥し、冷たく言い放った。

「帰れ、皇族が何の用だ」