夢を見ていた。


見たことのない大きな庭に、あたしと見知らぬ少年がいた。


自分の姿を見おろしてみると、小学生くらい小さくなっている。


どうやら夢の中のあたしは子供に戻っているようだ。


それから少年の顔をよく見てみると真っ黒に塗られていて、目も鼻も口もない。


それでもどこからか少年の声が聞こえていて、あたしたちはかくれんぼをして遊ぶことになった。


顔が真っ黒だなんて恐ろしいはずなのに、あたしの心に恐怖心や警戒心はなかった。


まるで、いつもこの広い庭で遊んでいたかのような、自然な感覚しかなかった。


あたしと少年は遊具もなにもない、ただ広いだけの庭で、それでもどうにか隠れる場所を探して遊んだ。


それは小さな花壇の裏だったり、植木の隙間だったり。


数少ない隠れ場所ですぐ見つかってしまうのに関わらず、それは空がオレンジ色に染まるまで続いた。


「じゃぁ、またね」


5時を知らせるチャイムが鳴り始めた時、あたしはそう言って少年を見た。


「また、明日も来てくれる?」


顔のない少年がそう聞いて来た。


少年の手はあたしの手をギュッと握りしめたままだ。


「もちろんだよ」


あたしはそう言って深く頷くと、少年はようやく安心したようにその手を離した。


「じゃぁね、バイバイ!」


「うん、また明日ね!」


あたしは少年に大きく手を振り、家へと戻って行ったのだった。