次の日、学校に行くと思っていたようないじめもなく、昨日のことが何もなかったかのように時間が流れていった。

 ただ正確に言えば、何事もなかったとは言い過ぎだろう。
 一時間目が終わった後、西岡さんがわたしの傍を通り過ぎ、こう言葉を漏らしたのだ。

「本当に図太いわね」

 わたしは気にしないようにした。わたしが声のしたほうをみると、話していた二人が一瞬のうちに黙る。わたしは気にしないと自分に言い聞かせる。

 わたしが三島さんを見ると、彼はいつものように無表情のままテキストを捲っていた。いつもと変わらない三島さんの様子がわたしを一層安心させた。