ケータイ小説 野いちご

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小倉ひとつ。

たい焼き屋「稲や」
2.日常は甘やかに

お店の中の掃除と洗い物をしたら、後はお客さまのご案内とお会計が主な仕事内容。


できたてのたい焼きを見栄えよく棚に並べたり、季節のもので新作があるときは試食を呼びかけたり、商品名を筆ペンで書いたり、こまめにお庭の落ち葉を集めたり、インターネットやお電話でのご予約の対応をしつつ、お昼休憩まで入口の机にかじりつく。

基本的な仕事はお客さまの対応だ。


私は書道を習わせてもらっていたおかげで結構読みやすい字を書ける。


金箔が散った淡い乳白色の和紙に筆ペンで商品名を書き、同じ大きさの真っ白な画用紙に貼って補強したものを、透明なプラスチックケースに入れて棚に立てかけるのは私の仕事。


季節ごとに商品が変わるので、結構な頻度で書いている。


商品名は大きく、粒を揃えて丁寧に。


字が小さいとご年配の方が読みにくいし、くせがあると大半の方が読みにくいし。

字体を凝ったり、飾ったりするのもいいけど、それで読みにくくなったら駄目だと思う。

商品名を見て少し固まったお客さまに、困り顔で「今月のたい焼きはなんですか?」って聞かれたら悲しい。


……張り切りすぎて文字が読めないくらい飾り文字にしてしまったことが一度ある。


やっぱり伝わりやすいのが一番だよね。


商品名を見て、「素敵ねえ」って声をかけてもらったり、目を輝かせてもらえたりしたら嬉しい。

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