武広のことを完全的に好きになったのはいつだっただろうか。そんなの、覚えてるわけない。きっかけは些細なことなのに段々と好きになっていったのだ。

いつしか、
あの腕にもう一度抱き締められたい。
あの胸の中にいたい。
と思うようになっていた。
武広は、そんなこと知るよしもなく普通に話しかけてくれる。
この関係のままで充分。そう思うのに…神様、私は、欲張りですね、きっとバチが当たります。武広の一番近くにいたい。あの腕に抱き締められたい。
そう、心から思っています。きっといつか、伝えたい。

その1歩を踏み出さなければ始まらないもんね。

そう、思っていたのに…

数学の時間、斜め前の席の武広が左を見ているのに気付いた。その目の先にいるのは、花菜ちゃんだった。

その目は、恋をしている目だった。

まるで光の世界に抜け出したのに、1歩後退りして、また、闇の中に連れ込まれるかのように…私は、そんな気分になった。