「咲希!パスッ!」


キュキュッと運動靴と床が擦り合う音が聞こえて、朝陽から私に向けて放物線を描きながら正確なトスが飛んでくる

『…っ』
足が床を離れるコンマ数秒、ネット越しの相手コートに向けて振り下ろした掌に軽く衝撃が走る

狙いを定めた通りの場所にボールがバンッと弾ける音が心地いい


「朝陽ーーっ!咲希ーーっ!かっこいいーっ!!」

「ナイスボール!」

コートの外から菜々とそれに続いて美帆の声が聞こえる

「咲希、ナイスアタック! あんたがなんでバレー部に入らないのか不思議でしょうがないんだけどー もったいなさすぎー」

朝陽が菜々と美帆にむけてひらひら手を振りながら、空いた方の掌を私に向けた


『朝陽のトスのおかげ。』


パンッと乾いた音がして私と朝陽の掌がぶつかる