「ここまで来ればいいかなぁ」

そう言って咲真くんは私をおろした。

「ここ来たことないだろ?」

咲真くんは私に問いかけた。

「うん、、ダメって言われてたから。」

ここは裏山。小さい頃にも行ったことがない。
なんでも野犬が出るからってお母さんが絶対許してくれなかった。

「はは、さすがだな。そりゃ電波が届かないところに娘を行かせたくはないわな。」

咲真くんはそう言って少し笑ってた。
咲真くんが笑ってるのを見たのは2回目かな。

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「こら〜!!男子〜!!
掃除しなきゃダメだよ〜!!!!!」

小学生の時だった。小学生でもカースト制度なんてのは出来上がっているわけで。
中心だった女の子に注意された男子は、不貞腐れてホウキを投げた。そのホウキは私の方に飛んでた。

やばいっ、、!

小さいながらも私はそう思った。
その時

バンッッッ!

私がゆっくり目を開けると、咲真くんが私の前に立っていた。そしてがくんと倒れた。

「さくまくん!!!!さくまくん!!!」

私は、咲真くんの肩を揺らした。
自分は痛い思いしてないのに大泣きしながら。
今考えたら、あれはまずかったな。笑

そうしたら、咲真くんは言った。

「別に、泣くことじゃない。」

私はそれを聞いて、なんでかわからないけどとても腹を立てて、

「ばか!!!!!!痛いのは嫌なこと!!!!
嫌なことは悲しいの!!!!」

と咲真くんに対して怒ってしまった。
そうすると咲真くんはきょとんとして、笑った顔で

「お前が1番悲しそうだよ」

って言ったんだっけ。

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「何考えてんだよっ」

コツン

そう言って咲真くんは私の頭をつついた。
すっごく優しい力で。
少し心が暖かくなった。あれ。私は2次元にしか恋しないはずなんだけど。あれ。

そのとき咲真くんは真面目な顔して口を開いた。

「時間が無い。
よく聞け。お前にとって弥生は"何人"だ。」


それを言われて私はキョトンとした。

「、、え?な、なにいってんの。私の学校に弥生は1人しか、、あれ、」

私は言葉が詰まった。そうだ。私の学校に弥生は1人しかいない。なのになぜか、
私の弥生は
1人じゃない。

「さすがにあいつもお前の成長についていけなかったか。科学とも言えどな。」

咲真くんはそう言って続けた。

「お前、17と、18の時の弥生は男か?女か?」

「え?あ、あ、え、、そりゃ男、、」

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「弥生って胸でかいよね、、、」

私は一緒にお風呂に入っている弥生を見て呟いた。

「、え、、、、!ば、ばかじゃん!!??
へ、へんなこというなぁ!!!!!!!」

そう言って弥生は顔を赤らめた。

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「そうだ。弥生は女だ、、女だったんだよ!!」

私はそう叫んで咲真くんの腕を掴んだ。

「そうだよ。弥生は1人じゃない。
全部で12人いたんだ。」

「どういうこと?」

私は咲真くんに問いかけた。
咲真くんは私の目をまっすぐ見て言った。

「お前は、"多重人格者"なんだ。」