「先輩のことが……ずっと前から」

まるで少女漫画の定番のようなセリフを言っている私、宇佐神 環奈(うさがみ かんな)は今 、人生最大の勝負に挑んでいます。

「す、すすすすす」

さっさと言えという気持ちにさせて申し訳ない。だけど、その二文字が言えないのが''私''というもので。

「はぁ……。」

私の目の前にいる先輩がため息をついた。
ああ、これは完全に呆れられてる。やってしまった。

「す、すみま」
「ねぇ、俺から言っていい?」

私の言葉を遮るように先輩は言った。

まさか告白する前に振られるとはいい笑い話だ。まあ、それぐらいが自分にちょうどいいかと思っていたその時、先輩が自分を抱き寄せた。

「俺も、ずっと好きだった。」

うそうそうそ!!!うれしすぎる!!!!
夢みたいにうれしい……

先輩は私の顔に手を添えてじっと見つめる。

うそ、そんな、まだ両思いになったばかりなのに、
だめよ、そんなはやい、、いやでもいいんじゃないか?だって、私なんていつから好きだと思ってるのよ。

開き直った私も先輩を見つめ、目を閉じようとしたその時、ある違和感を感じた。

あれ先輩こんな顔だったっけ?
鼻が少し赤くなってる。
そんな鼻が真っ赤に腫れてだんだん大きくなっていく。化粧でもしてるような……。
まるで''ピエロの''ような……。

真っ赤な大きな唇を開いて"それ"は言った。

「ずっとまってたんだ。やっと開催できる。
バースデーパーティをね☆」

そうやってウィンクをしたのは私の憧れの先輩とは大きくかけ離れた醜いピエロだった。

「い、いや!!!!気持ち悪い!!」

そう言って私はピエロの腕をほどき逃げた。
走る。走る。全力で走った。
どこも真っ暗だけれど、走らないと
コロサレル
そう、思ったから。
足は絶対とめなかった。
後ろから
"逃げても無駄なんだよ "
という不気味な声は聞こえない振りをして。


リリリリリリリリリリーーーーーーン!!!

「はっ!はぁはぁはぁ」

起きたらそこは見覚えのある自分の部屋だった。夢だったのか、そう思い私は手汗びちょびちょな手で胸をなでおろした。

「少し リアル だったなぁ。まあ夢なんだけど。」

夢だったとその時の私は思った。いや。そう信じ込みたかったんだ。
たとえ、その夢が絶望のバースデーパーティへの招待ショーだったとしても。