難ありな私の担当編集者、岩崎さんとうまくやっていけるのだろうかという不安を抱えながら迎えた翌朝。私は、ブラウスにタイトスカートというオフィスカジュアル風な格好で近所のコンビニにやって来た。

 聴きなれたメロディーを鳴らしながら開く自動ドア。見慣れた商品陳列と、レジカウンターの向こう側に立ついつもの中年のおばちゃん。私は、このコンビニのオーナーであるそのおばちゃんの元へとまっすぐ歩いて行く。

「あら、こんにちは」

「こんにちは」

 自宅から徒歩十分以内の場所にあるこのコンビニへ、私は二、三日に一回程度は通っている。このオーナーには顔も覚えてもらっていて、もはや常連のようなものだ。そんな私が今日ここへやって来た理由、それは。

「11時から面接をしていただく予定の如月です」

 腰を曲げ、頭を下げた。私は今日、ここへアルバイトの面接をしにやって来た。

 小説家といっても、ベストセラーなんて一作も出したことのない売れない小説家。収入は安定しないし、正直生活はかつかつだった。

 今まで、学生時代にしていたアルバイト代や子供の頃に親が貯めていてくれたお年玉の貯蓄でなんとかやって来ていたものの、それがそろそろ底をつきそうだった私は、アルバイトを始めることにしたのだ。

「あらまあ。アルバイト希望の電話をしてくださったのは、貴女だったのね」

 オーナーは、瞳を三日月型に細め、口角を上げた。すると、もう一人のアルバイトの男性に「少しの間よろしくね」と一言声をかけ、私をバックルームへ通した。