「なんだか、最近亜子楽しそうね」

「へ?」



お昼休憩中、一緒に食堂にいた秋穂が珍しいものでも見るようにそう言った。
楽しそう・・・?



「先輩のことがあって、気落ちしてるかと思ったんだけど」

「それは・・・。ほんとにショックだったよ。ずっと憧れてた人だったから・・・」




きっとまだちゃんとふっ切れてはいない。
自分の気持ちを誤魔化して、気を反らしているだけのような気がする。

でも、気が反らせる誤魔化せるものが今の私にあるっていうのは、事実だ。



「でも、今は・・・。他に気になることがあるから」

「気になること?なにそれ。すごい興味ある」

「大したことじゃないよ。なんていうか・・・。拾ったの」

「拾った?なにを」

「えっと・・・、犬・・・というか、なんと言うか」



さすがに狐、なんて言っても信じてもらえないよね。
ましてや妖狐だなんて。




「え、犬拾ったの?」

「そう。だから、いまその子の世話が忙しくて・・・」

「それで、充実してるってわけ?なんかそれ、逃避してない?」




逃避といわれたらその通りだと思うけど。
でも、今私にとってミコトは大切な護るべき存在なの。