翌日、葬儀は身内だけで行われた。


キャバクラ嬢が自分のお店のトイレで自殺ということで、世間で蒔絵さんの存在は有名になっていた。


今日の新聞には『美人キャバクラ嬢突然の自殺!』と、デカデカと書かれていた。



自分の身内が一瞬にして有名人になったことを、まるで他人事のように感じられる。


家や店に沢山の取材陣が押しかけている。


「有名店だけあって、すごいなぁ」


お父さんは新聞で蒔絵さんの記事を読んでのんびりとそう呟いた。


昨日はさすがにショックを受けていた様子だが、今日は傷ついている様子には見えない。


やっぱり、お父さんは蒔絵さんのお金が目当てだったのかもしれない。


蒔絵さんはおじいちゃんのコネ目当て。


なんだかんだでお似合いの2人だったのかもしれない。


あたしはカップに注がれた熱いコーヒーを飲みながらそんな事をぼんやりと考えた。


「さて、芽衣。蒔絵の遺産の事だけど」


なにが『さて』だ。


たった数時間前に葬儀が終わったばかりだというのに、もう遺産の話か。


あたしは呆れてお父さんを見る。


葬儀場ではあれだけ泣いていたと言うのに、あれは取材陣向けの演技だったのか。