担任が運転する車で病院へ駆けつけた時、女は顔に白い布をかけられていた。


ベットに静かに横たわっている女。


布をどかせて顔を確認すると、確かに今朝まで家に一緒にいたあの女で間違いなかった。


しかしその顔色は真っ青で、派手な化粧も役立たずになっている。


布団がかけられている胸元に注目してみても、そこが上下に動いている様子はなかった。


「芽衣！」


久しぶりに聞くお父さんの声に振り返る。


病室の前にはアロハシャツと短パン姿のお父さんが立っていた。


肌はこんがりとやけていて、一体どこへ行っていたのかとため息をつきたくなった。


「お父さん……」


「蒔絵。蒔絵は……」


お父さんがベッドに近づき、固く目を閉ざしている女を見るとその場にヘナヘナと座り込んでしまった。


「亡くなったんだって」


「なんで、どうして……」


本当に悲しいのか、それともそうではないのかわからないが、お父さんはしきりに女の手を握る。


まるで、そうしている内に体温が戻るんじゃないかと信じているように。


だけど女は目覚めない。


もう、目覚めないのだ。