私はむぎちゃんが思っている以上に臆病で弱いから。



私はね、柊斗が好きなの。中学二年生の秋ぐらいから。


だけど、そのことをむぎちゃんに言えてない。


むぎちゃんが恋に疎いから、というのもあるけど、
多分むぎちゃんは、私がそんな恋するタイプじゃないと思ってるんじゃないかな。


修学旅行とかで、恋バナになっても、私は曖昧に誤魔化してきたから。


むぎちゃんとも、恋バナはしたことがない。


それに、柊斗はモテる。柊斗のことを好きな女の子は、いっぱいいた。


柊斗はそんな女の子からの告白を、いつも丁重に断っていたけれど。


だから、こんな私が告白したって、届くわけない。辛い思いをするのは、私だけでいい。

友達思いのむぎちゃんのことだから、私が柊斗にフラれると、きっと一緒に泣いてくれる。



それでむぎちゃんが失恋がこんなにも辛いことを教えてしまったら?

きっとむぎちゃんは自分の気持ちに正直になれなくなってしまう。



それに、それにね?

むぎちゃんにこの事を話して、これをきっかけにむぎちゃんが恋心に気付いてしまったら…。

もちろんその相手が大翔ならいい。私もそうだと信じてるけど…。

でも。でももしそうじゃなかったら?その状態で、むぎちゃんが大翔の恋心に気付いてしまったら?

そうなったらどうしよう。私は、むぎちゃんも大翔も傷つけてしまう。

もし、もしも、むぎちゃんの好きな人が、柊斗だったら?


私たち四人は、きっと一緒に居られなくなる。

そうなるのは、もう嫌だった。



……これは、私の実体験だから。私のトラウマになっているから。