さらりとした茶色の髪が風で、ふわっと舞う。


柔らかな雰囲気だが、向けられている背中からは強靭な意思が伺える。


そうじゃないか。


なぜもっと前に気づかなかったんだろう。


彼はそういう男だったのだ。


淡い琥珀色の瞳とか、通った鼻筋とか、甘いくちびるとか。


いやいや、甘い線の、だ。


十分に味わっているだけに、言い方を間違えた。


誰もいないというのに倫子は咳ばらいをしてごまかす。


外見はどちらかというと優柔不断っぽい王子なのだ。


外見、は。


「行っちゃったな」


宗忠の乗る車が白い雪をかぶった、うっそうと茂る木々の向こうに消えた。