365日目。
……ああ、なんてことだ。
君と出会ってちょうど一年。
こんな喜ばしい日に、僕はなぜ、こんな薄暗い場所に閉じ込められているんだろう。
本当に陰気な所だ。
狭くてじめじめしていて、鍵がかかっていて出ようにも出られない。
冷たい鉄格子のはめられた小さな窓からは、外の景色なんて何にも見えやしない。
君と過ごしてきた月日を数えていたあのカレンダーも、ここにはない。
君と僕の軌跡であるカレンダーを愛でることができなくなってしまった。
なんてことだ。
こんなに悲しいことはない。
……ああ、ごめん。
勘違いしないでほしい。
君に恨み言を言うつもりはないんだ。
僕がここに連れてこられたのが君のせいだなんて、これっぽっちも思っていないよ。
どうせ君の嫉妬深い恋人の仕業だろう?
君に大きな愛情を寄せる僕のような男が君の近くにいることに焦りを覚えて、
僕のことを密告するなどという卑怯な真似をしたんだろう。
全く心の狭い男だね。
ねえ、君、安心しておくれ。
君が僕のことを裏切ったなんて、僕は決して思っていないからね。
どうか安心しておくれ。
僕ほどに君を愛する男はいないということを、聡明な君ならば理解してくれていると信じているよ。
――ああ、不思議だ。
君のことを考えていたら、この場所に囚われていることがちっとも苦痛じゃなくなってきたよ。
君がこの世界のどこかに確かに存在していて、僕と同じ空気の中で呼吸しているというだけで、
僕はすっかり満ち足りた気持ちになれる。
君が吸い込み、君の身体の中を通って、君の唇から吐き出された空気が、
流れ流れてここへやってきて、僕を包んでいるんだよね。
つまり僕はいつでも君に包まれている。
君の身体を通った空気が僕を包み、僕を通り抜け、そしてまた君のもとへと流れていく。
その空気をまた君は吸い込み、吐き出し、僕のもとへ送ってくれる。
ああ、最高に幸せだ。
これ以上の幸福はない。
僕の身体には、隅から隅まで君の吐いた空気が満ちている。
君が側にいなくても、君の笑顔を近くで見られなくても、そんなことは僕には関係ない。
僕の愛はそんなにちっぽけじゃない。
どうしてそこまで愛してくれるのかって?
どうしてそこまで尽くしてくれるのかって?
だってね、僕の全ては君のものだから。
僕の心も身体も、全部君のものだ。
頭の先から爪の先まで、心の奥底までも、全てが君のものだ。
つまり、君は僕の所有者――君は僕の神なんだ。
神を崇め、神を愛し、神に尽くすのは当然のことだろう?
ねえ、分かってくれたかい?
僕はこれほどまでに君を愛している。
君をこんなにも深く愛する男がいることを、どうか忘れないでおくれ。
ああ……なんてことだ。
あんなちっぽけな窓だけど、鉄格子の隙間から空が見えるよ。
なんて綺麗な朝焼けなんだ。
ぜひ君に見せてあげたいよ……。
絶望に沈んだ漆黒の夜が、希望に満ちた朝の光にかき消されていく。
君から引き離されて、僕が絶望の淵に陥った、悲しい夜が終わる。
君の空気に包まれているという幸福な希望に満ち溢れた、素晴らしい朝が始まる。
ああ、世界は美しい。
君が存在しているというだけで、僕の目には、この世界の全てが光り輝いて見えるんだよ。
ああ、僕はやっぱり君を愛している。
ここから出たら、きっと君に会いに行くよ。
絶対に脱け出してみせるからね。
いつか必ず、また君に会いに行く。
だから、どうか待っていておくれ。
君がどこにいたって、僕は必ず君を見つけ出してみせるから。
そして、君に会えたら、今度こそ、
僕の全てを君に捧げるよ。
僕を、全部、あげる。
君に、全部、あげる。
じゃあ、またね。
今夜も良い夢を。
……ああ、なんてことだ。
君と出会ってちょうど一年。
こんな喜ばしい日に、僕はなぜ、こんな薄暗い場所に閉じ込められているんだろう。
本当に陰気な所だ。
狭くてじめじめしていて、鍵がかかっていて出ようにも出られない。
冷たい鉄格子のはめられた小さな窓からは、外の景色なんて何にも見えやしない。
君と過ごしてきた月日を数えていたあのカレンダーも、ここにはない。
君と僕の軌跡であるカレンダーを愛でることができなくなってしまった。
なんてことだ。
こんなに悲しいことはない。
……ああ、ごめん。
勘違いしないでほしい。
君に恨み言を言うつもりはないんだ。
僕がここに連れてこられたのが君のせいだなんて、これっぽっちも思っていないよ。
どうせ君の嫉妬深い恋人の仕業だろう?
君に大きな愛情を寄せる僕のような男が君の近くにいることに焦りを覚えて、
僕のことを密告するなどという卑怯な真似をしたんだろう。
全く心の狭い男だね。
ねえ、君、安心しておくれ。
君が僕のことを裏切ったなんて、僕は決して思っていないからね。
どうか安心しておくれ。
僕ほどに君を愛する男はいないということを、聡明な君ならば理解してくれていると信じているよ。
――ああ、不思議だ。
君のことを考えていたら、この場所に囚われていることがちっとも苦痛じゃなくなってきたよ。
君がこの世界のどこかに確かに存在していて、僕と同じ空気の中で呼吸しているというだけで、
僕はすっかり満ち足りた気持ちになれる。
君が吸い込み、君の身体の中を通って、君の唇から吐き出された空気が、
流れ流れてここへやってきて、僕を包んでいるんだよね。
つまり僕はいつでも君に包まれている。
君の身体を通った空気が僕を包み、僕を通り抜け、そしてまた君のもとへと流れていく。
その空気をまた君は吸い込み、吐き出し、僕のもとへ送ってくれる。
ああ、最高に幸せだ。
これ以上の幸福はない。
僕の身体には、隅から隅まで君の吐いた空気が満ちている。
君が側にいなくても、君の笑顔を近くで見られなくても、そんなことは僕には関係ない。
僕の愛はそんなにちっぽけじゃない。
どうしてそこまで愛してくれるのかって?
どうしてそこまで尽くしてくれるのかって?
だってね、僕の全ては君のものだから。
僕の心も身体も、全部君のものだ。
頭の先から爪の先まで、心の奥底までも、全てが君のものだ。
つまり、君は僕の所有者――君は僕の神なんだ。
神を崇め、神を愛し、神に尽くすのは当然のことだろう?
ねえ、分かってくれたかい?
僕はこれほどまでに君を愛している。
君をこんなにも深く愛する男がいることを、どうか忘れないでおくれ。
ああ……なんてことだ。
あんなちっぽけな窓だけど、鉄格子の隙間から空が見えるよ。
なんて綺麗な朝焼けなんだ。
ぜひ君に見せてあげたいよ……。
絶望に沈んだ漆黒の夜が、希望に満ちた朝の光にかき消されていく。
君から引き離されて、僕が絶望の淵に陥った、悲しい夜が終わる。
君の空気に包まれているという幸福な希望に満ち溢れた、素晴らしい朝が始まる。
ああ、世界は美しい。
君が存在しているというだけで、僕の目には、この世界の全てが光り輝いて見えるんだよ。
ああ、僕はやっぱり君を愛している。
ここから出たら、きっと君に会いに行くよ。
絶対に脱け出してみせるからね。
いつか必ず、また君に会いに行く。
だから、どうか待っていておくれ。
君がどこにいたって、僕は必ず君を見つけ出してみせるから。
そして、君に会えたら、今度こそ、
僕の全てを君に捧げるよ。
僕を、全部、あげる。
君に、全部、あげる。
じゃあ、またね。
今夜も良い夢を。