ケータイ小説 野いちご

まだ見ぬ春も、君のとなりで笑っていたい

4 君のためにできること



「天音! こっちこっち」

駅の改札から出てきてきょろきょろとあたりを見回している天音に声をかけながら手を振る。

すぐに気づいた彼は、微笑みを浮かべながらこちらへやって来た。

「おはよ。寒いね」

天音が白い息を吐きながら頷く。

「なんか変な感じだよね。いつもあかりでしか会わないから、外で会うと新鮮だね」

彼がまた頷いた。

外で会うと、ノートに字を書くのが難しいので、天音は自分の言葉を伝えられなくなってしまうのだということに今さら気がつく。街に呼び出したりして悪かったかな、と少し申し訳なくなった。

今日は土曜日。普段は土日は会わないけれど、今日は特別に駅で待ち合わせをして買い物に行く約束をしていた。

どうしてそんな経緯になったのかというと、きっかけは一週間前に遡る。

いつものように放課後あかりで待ち合わせて、天音のおかげで遠子や香奈たちとの揉め事が無事に解決して、関係が修復できたことを報告していた日のことだった。

天音が落とした生徒手帳を拾って、せっかくだからと顔写真を見せてもらうと、その横に生年月日が書いてあった。そして、彼の生まれたのが十二月末で、もうすぐだ誕生日ということを知ったのだ。

そこでふいに思いついて、今回のことのお礼もかねて誕生日プレゼントを送りたいから、欲しいものを教えてと訊ねた。

でも彼は『お礼をもらうほどのことはしてない』と困ったような顔で受け入れてくれず、それでもしつこく食い下がっていたら、『遥の誕生日はいつ?』と問い返された。わたしの誕生日は三月なのでまだまだ先だと答えると、『僕も何か贈る。プレゼント交換しよう』と言い出した。

それじゃお礼の意味がないとさんざんごねたけれど天音は聞いてくれず、結局お互いに誕生日プレゼントを贈るということで決着した。

ただ、どちらも同年代の異性にプレゼントをあげた経験がなくて、何をあげたらいいか分からないという話になり、最終的に、『期末テストが終わったら、一緒にお互いへの贈り物を買いに行って、欲しいものを選ぼう』ということになったのだ。

そして、わたしの学校のテストが金曜日に終わったので、ついに今日、約束を果たすことになった。



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