今日はね、クリスマスイブ。


ヤヨと、駅で待ち合わせ。



「……おそ」



「ごめん」



あたし、遅刻。

昨日楽しみでうまくねれなかったせい。


謝りながら、ヤヨの冷たくなったほっぺにホッカイロをぺったりくっつけた。




「いらない。行こうぜ」


ホッカイロ戻ってきた。
可哀想に。ポッケにお戻り。



「どこにいこう?」



「とりあえず建物の中行きたい。まじで寒すぎ」


文句言いながらも、
んっ、て。



手を差し出してくれるヤヨ。



「責任持ってあっためるね」



両手でヤヨの手を捕獲した。


そしたら左手だけ繋がれた。
ごめんね右手。待っててね。



「俺、ここらへんの土地勘ないんだけど」



「あたしもない」



「は?」



うん。たしかにここでデートしようって言ったのはあたしだけど。



クリスマスツリーの点灯式が結構大々的だって、調べたら出てきたからであって。



この駅に降りたことないし。




「店とか……あるのか?」



「ちょっと廃れてるよね」



グルグル回ってたらね、
なんか、こう。
怪しい雰囲気のところに来ちゃったよ。



どれを見ても派手で、あんまりセンスのない建物だし。


駐車場の入り口が、のれんだらけだし。



それに、そこら中にあるこの看板ってなんだろう?



「"休憩"って何?休めるところ?」



「……。芙祐、戻ろ」



ヤヨはあたしの手を引っ張って、
Uターン。



「中入れそうだったよ?カラオケあるって書いてあったし」



「はぁ……なんなのお前」



「行かないの?この辺くらいしかお店ないじゃん」



「あれラブホだけど。行きたいの?」



ヤヨの、呆れ顔。

え、ほんとだ。ホテルって書いてある。



「あれが?噂の?や、やだ。行かない」



あたし、全力で首を振ったから。
そんな破廉恥なこと絶対に言わないから。



「わかってるよ。連れてかねえよ」



ヤヨはまっすぐ前を見て、それはそれは遠い目をして言い放ったよね。