SIDE 弥生

***


”あたしは、もういいよ”


……それは、どういう、いみ。


別れるっていう意味?



神社から出て行った芙祐の後ろ姿を
呆然と眺めて、
はっとして、追いかけはじめた。


どこの道でも人混みに邪魔される。


駅に着いたけど、
そこらじゅうを見渡しても
芙祐はもうどこにもいなかった。



家に着いて、やっぱり玄関に置き去りにされていたスマホを手に取り、
迷わず芙祐に電話する。



数回のコール音が途切れ、
「もしもし」の「も」だけ言った瞬間
ぶちっと電話を切られた。



もう、しつこいくらいにかけている。


そろそろ電源を落とされそうだ。


全然平常心でいられない。


「つかまじ、出ろよ……」


LINEは既読スルー。



芙祐が押し付けるように渡してきた
白い袋から、お守りを取り出した。
学業成就。



俺も芙祐にと思って買ったから
三つも同じものが手元にある。



あの神社のお守りを買うなら元旦がいいって聞いたから、
行ったわけだけど、
ご利益あんのかよ


もう今、最高に不運だけど。