暗く秋を感じさせてくれる空、冷たい空気、人々の身なり
この情景が妙になつかしく、せつなく・・・すくなくても“陽気”な気分にはさせてくれなかった。
微かにあの季節独特に匂いが・・・香る

深夜2時・・・
いつもこの時間帯にここへ来る
女性一人は危ない・・・なんて事はしってるけどそんなのはどうだっていい
ふと見上げるとおせじにも綺麗とはいえない高架線の下で小さくため息をつく
川が通りドラマとかでも見るありきたりな情景、薄暗く普段は誰一人通らない。

ここは落ち着く
騒音が聞こえる物の、誰一人いなく本当に
落ち着く

ふと自分の手首を見るとなんとも痛々しい傷の数々
誰がどうみてもこれは意図的につけられた傷
白く細い手に紅くなんとも痛々しい傷をそっとなでる
「こんなんじゃ・・・・」
息を吐くように呟き、それは騒音に混じり余韻を残さず虚しく消える
「いつに・・・・

いつになったら・・・・楽になれるの?」

その独り言と共に一気に崩れ落ちる
死にたい

死にたい

消えたい

誰も私になんて構わないで、誰か

私を
   殺して

――・・・

「ざまぁねぇーな」
その言葉を弱り果てた相手に投げかけ軽く蹴る
傍から見たら立ちの悪い喧嘩だろう

相手は恐怖感を露にしその場から立ち去った
くだらねぇ・・・

つまらねぇーんだよ、毎日、毎日
つまらないこの世界

もっともそんなつまらない世界でさらにつまらく、くだらない自分にため息を吐いた
ポケットから煙草を取り出しライターで火をつけ口に運ぶ

ん?

向こうの方から誰かが来る
男か・・・・?・・・いや、女だ
どう考えても可笑しいだろ・・・今深夜2時だぞ?

わざわざ襲われにきてるようなもんだろ・・・っ
そう考えているうちに女はどんどん近づく
そして・・・

「え・・・・人・・」
女は俺に気付くと唖然とし目を丸くした
そしてこの出会いが運命の歯車を狂わす





――・・・まだ知らない

二人の世界がこの瞬間に動き出したことを
誰も、本人達さえも