一ノ瀬圭太との初めての出会いは教室。
あ行の「い」の字と「お」の字は、余りにも近過ぎた。


「お前たち二人が一学期の学級委員な」


担任の先生からいきなり宣言された。
私と彼が、教壇の目の前に座ってたのも不幸だった。


「ええ〜っ、イヤです〜!」


無駄とは思ったけど抵抗を試みた。
私とは反対に一ノ瀬圭太はヤル気が満々だった。


「頑張りますっ!」


(一人でやれば?)


実に思春期そのものだった私は、あいつの言葉に即反応した。



「一緒に頑張ろうぜ」

「冗談!誰があんたとやるって言った!?」

「でも、今、担任に任命されたし」

「少しは抵抗しなよ、あんた」


私の言葉なんて、当時の彼には届きもしなかった。
結局、渋々と後を追い、教壇に上がって挨拶をした後……


「えーでは、クラスの代表として、先ずは委員決めからやりたいと思います!皆、押し付けられるのは嫌いだと思うので、自分がやりたいと思う委員の欄に名前を書き込んで下さい。希望の多い委員はジャンケンで決めます!」


思えば乗っけから人の自主性に働きかける男だった。
何かと反抗精神の強い年頃だった私達のクラスは、彼のそんな一言で全員が席を立った。


黒板に名前を記入する生徒を教室の後ろから佇んで眺めた。

皆は自分の希望に沿う係になろうと必死に計算高く動いたり、直感だけをアテに名前を書いたりしてる。