篠山 はな 25歳。
虎ノ門で働く事務職派遣社員。
もうすぐ付き合うかもしれない彼あり。




ヤバイ!
電車に乗り遅れそう!
と、小走りの朝
メールがきた。

『おはよう!今日も寒いね!お互い仕事がんばろうね』

そう、この送り主が
もうすぐ付き合うかもしれない彼なのだ。

早河 巧 28歳。

実はこの人別れた彼女とまだ同棲してるのだ。

そう、カミングアウトされたのが半月前。

話をまとめると
職がない元カノさんは収入がなく出ていけないと。
職を探し出ていくまで待っててと言われているのだ。

まぁ、この時点で
【はい?】となるわけで。
でも何故か受け入れてしまって今がここ(笑)

ひとまず
『おはよう~、ほんと、寒いね。がんばろうね~』と返信する。

会社に着いてパソコン立ち上げていると
営業の多部さんが話しかけてくる。
「篠山さん、おはよう!」
彼は仕事は真面目だけど遊びも思いきりやる既婚者。
特に当たり障りのない話をして仕事を始める。

仕事は営業事務で
主に多部さんのアシスタントなのだ。

いつも通り仕事をしていると
パソコンのチャット画面が点滅。

【ん?】

開くと目の前の多部さんだ。

ちらっと見ても目は合わない。

『今日、夕飯でも食べて帰らない?』

【ん?んん?】

『どうしたんですか!?突然』と送ってみる。

多部さんに誘われたことは1度もなく、まさか誘われるとは思っていなかったので意外でしかなかった。

『いや、今日奥さんいなくてご飯ないんだー。仕事の話以外もちょっとしてみたいなと思ってたからさ』

なるほど。
まぁ、今日、巧も会社の人とご飯なんだって言ってたっけ。
それに、私まだ彼氏持ちじゃないから許可とかいらないんだった。

『あれ、奥さんに怒られませんかー?遅くはなれないですけど大丈夫ですよ!』

なんとなく、そう、なんとなく
誘いに乗ってしまっていた。

多部さんは男性として好みタイプではなくやましい気持ちがこれっぽっちもなかったから既婚者といっても問題ないと思っていたのだ。