次の日、ビルの前に立つ学に気付いた。学も私に気付いたようだ。


私は溜め息を吐いて近付いていった。



「篠崎さん、おはようございます。」



私の挨拶に胡散臭い笑みを張りつけて挨拶する学に目が点になった。



「吉良さん、おはよう。」


「…………。」


「お昼休みに時間を取れるかな?」


「………はい。」


「じゃあ、お昼になったら…………ここで待ち合わせよう。」


「わかりました。」



胡散臭い笑みを見せる学をじっと見つめる。昨日とは全く別人のようだ。


瞳は青いままだが、茶色の髪は綺麗にセットされ、スーツもビシッと着こなしている。


いかにもビジネスマンだ。私に背を向けて歩いていく学の後ろ姿を眉間に皺を寄せて見つめていた。


まさか学が私を見て笑いを堪えてるとは思いもしなかった。



「葉月、覚えてろよ。」



学の小さな呟きは私には全く届いてなかった。