落とされた爆弾の威力は絶大だ。

絵里子さんの後輩たちですら絵里子さんが離婚したことを全く知らないようだった。

旧姓に戻ったとは聞いてないし、婿養子でもなかったらしい。一緒にいても何も変化がなく離婚には気が付かなかったという。

残された女の子3人は大騒ぎ。
俺も驚いたが、彼女達と違って絵里子さんが独身と聞いてかなり安堵していた。
彼女にご主人がいないとは。単純に嬉しい。

しかし、どうやら柴田は離婚したことを知っていたらしい。
驚きもせず、騒ぎをよそに黙って酒を口にしていた。

そして、そんな大騒ぎのうちに飲み会は終了した。

居酒屋を出てみんなで駅まで歩いていると、前を歩いている絵里子さんの後輩たちの話し声が聞こえる。

「離婚っていつだったのかな?」
「全然知らなかった」
「だって名字も変わってないし」
「もしかして、かなり前だったとか?私たちが就職する前とか」
「いやいや。だって、病院に迎えにきたとこ見たことあるもん。超絶イケメン」
「うーん。じゃ病院辞めた頃?」

いや、変化はあったのだろう。だが、誰にも見せないようにしていたのか。

昨年にそれまで勤めていた病院を退職して企業の健康管理業務についているというのが周りが知っている唯一の絵里子さんのの変化。

「絵里子先輩、いつも他人のことばっかり気が付いて、気にして気を配って。自分のことは自分ひとりで抱え込んでいるんじゃないのかな」

まいちゃんが泣きそうな声を出した。

「そうそう、いつだって他人のことフォローしてね」
「何かあれば攻撃の矢面にたって庇ってくれて戦ってくれて」
「私たち、頼りすぎてたよね」

青いスポーツクーペの運転席で涙を流していた絵里子さんを思い出す。
胸が切なく苦しくなった。