「もう、こんな時間か。」



見上げた空はもう暗かった。



携帯画面の時計に夜7時と表示されている。






早く帰らないと、この街は危険なんだ。




さっき不良から絡まれて痛い目にあったばっかりだ。



偶然助かったけど、次は...。



「......。」




...もうやだ。



なんで、なんでこんな街に引っ越してきたの。




今私の家族と呼べる唯一のおばさん、千尋姉さんが、この街に引っ越そう、って言ってくれた時は本当に嬉しかったんだろう。



中学校がどんな所かも覚えてないけど、新しい生活が待ってるって、少なくとも今までにないくらい楽しい生活が待っているんだろうって思ったんだろう。


だから、越して来たばかりの時は負の感情は無かった。



ところが、現実はどうだ。



不良ばかりの学校、授業のない生活。



気づけば足を早めていた。



値踏みする目。慣れない非日常な環境。



気づけば涙が溜まっていた。



自分のことさえ、ろくに覚えてない。



気づけば涙が零れていた。



私はなんでここに来たの?なんでこの街なの。



なんで、あの学校だったんだよ。なんで分からないんだよ。



だれか、だれか教えてよ。



「......。あれ?ここ、どこ?」



気づけばネオンの光る商店街のような所に来ていた。


あぁ、ここが繁華街って呼ばれる所なのか?


もう、どうだっていいんだ。




分からないんだ。私が誰なのかすら。




この街が何なのか、ここに来た理由すら。





だから________





ゴッ。



頭に強い衝撃を受けた。


そこで私の意識は途切れた。