ケータイ小説 野いちご

僕らはきっと、あの光差す場所へ

PM 17:00 追憶
◇——春瀬 光





———20××年、7月××日。


田舎でも都会でもない中途半端とも普通とも言えるような町に、兄である僕———『春瀬 隼人』と、弟であるあいつ———『春瀬 光』は、とてもよく似た双子として生まれた。

普通の会社員の父親と専業主婦の母親。住宅街に建っていた一軒家は確かかなり大きかった気がするし、母親が働かなくても生活が成り立っていたのだから家庭はそれなりに裕福だったんだろう。

おぼろげな記憶ではあるけれど、僕らは双子ということ以外は他の家と何ら変わらず、むしろとても幸せな生活を送っていたと思う。


気が弱くて引っ込み思案だけれど頭のいい『春瀬 光』と、やんちゃでイタズラ好きだけれど誰とでも分け隔てなく仲良くなれる『春瀬 隼人』。そっくりな顔立ちの僕らの性格はまるで正反対で、周りの人たちはいつも僕らのことを『ふたりでひとりみたいね』と笑った。


あの頃、僕はまだ『春瀬 隼人』であり、あいつは『春瀬 光』だった。


あいつ———ヒカルは、いつも僕の後ろに隠れて、僕を介さないと友達すら作れないような臆病な奴だった。同時にあの頃、僕はとてもやんちゃだったし楽しいことが大好きで、いつも友達に囲まれていたと思う。けれど、いつだって真っ先に僕を頼ってくれるヒカルのことが僕は誰よりも一番大好きで、それはきっとヒカルも同じだったと思う。


この世界にたったひとり、同じ顔をして同じ血を持った双子の片割れ。僕にとってヒカルは唯一無二の存在だったし、ヒカルにとっても僕はそうだったと思っていた。


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