ありきたりの言い訳に、

「……フン」
彼は納得がいかないといった表情を浮かべ、自分の杯を一息に空けた。

先程の失態を取り戻すべく、
私はテーブルの瓶を手早く持ち上げた。


真実を見抜く冷色の瞳が、シャンパンを注ぐ手元をじっと見つめている……

すると私の手は、勝手にカタカタと震え始めた。


そう、

あれは嘘。

私は嘘をついている。



決して口にできない真の理由は__



これ以上社長に仕えることが辛くなってしまったこと。


仕事への真摯な姿勢と志、己への厳しさ、部下への接し方……

そんな彼を間近で見ているうちに
私はいつしか彼に好意を、
いや、そんな軽いものではない。

一人の男性として、愛するようになっていたのだ。