―琴葉、琴葉…。

…誰?お母さん…?

じゃあ、夢…?

あぁ、そっか。悪い夢を見てたんだ。だって、そうじゃないとあり得ない。

お坊っちゃまがあんなことをするなんて、あり得ないんだ。でも、だとしたらなんて酷い夢なんだろう。

いつも見る夢は、温かくて、優しくて、お母さんがいてくれるのに。

どうして、怖い夢を見るの?夢まで怖くなってしまったら、私はどこに行けばいいの?

「琴葉?…琴葉!」

「っ…ん」

あ、れ…?ここは?

カーテンで四方を囲まれた場所。消毒の臭い。…病院?

「琴葉、もう大丈夫だからな。大丈夫だから」

「…成夜?」

なんで、病院にいるの?なんで、成夜がいるの?なんで、成夜スーツなの?

ぎゅって握られた手は痛いくらいで、なんでか震えてた。