会社の最寄りである新宿駅から山手線に乗り、池袋で降りる。

今日の撮影があるスタジオ、フェミール池袋まではここからさらに15分程度歩かなきゃならない。

駅で購入した、スタッフ用のドリンクやスナック類を一人で持ってくれた拓巳は、ワンステップをわたしのために狭めて、ゆっくり歩いてくれる。
こんなに女の子扱いされると、ちょっと気恥ずかしくなっちゃうんだけどな……。

意識的に隣から視線をそらして歩いていると、道行く女の子たちが、すれ違うたび、ため息をつきながら拓巳を振り返っていくことに気づいた。
そうよね。
わたしだって街で拓巳のこと見かけたら、きっと同じことしちゃうだろうな。

なんでこんなハイレベルなイケメンの「ドストライク」がわたしなんだろ?

やっぱり、からかわれてるだけじゃないかなあ。
拓巳だったら、スーパーモデルとだって付き合えそうだし。
見てよ、この足の長さ。横に並びたくない感じで……


「奈央さんっ!」

「え?」

ふいに拓巳の叫び声が響いて、思いっきり腕を引っ張られた。
ビニール袋がバサッと落ち、ペットボトルが倒れる音が続いて……。
気が付いた時には、拓巳の腕の中に強く抱きすくめられていて、わたしは一気にパニックに陥った。

「ちょっ……なな何すっ」
いきなり何!?
し、心臓が、爆走して……顔があげられない。