「ああっすみません、ちょっと待ってっ!」

閉まりかけたエレベーターのドアを無理やり両手を使ってこじ開けて、わたしは中へ滑りこんだ。

「27階、お願いします」

迷惑そうないくつもの視線は無視。
こっちは睡魔と戦うだけで精一杯なのよっ!
まぶたが、もう落ちそうなんだから。

あのボイスチェンジャーの変な声を思い出してしまって、なかなか眠れなくて。
着信が怖くて電源を落として寝たから、いつもセットしてるスマホのアラームが鳴らなくて、思いがけず寝過ごしちゃって……
10時過ぎ、ようやく出社、てわけ。

クルクル変わっていく階数表示を見上げながら、わたしの心拍数も少しずつ上がっていく。

あいつ、プレゼント、って言ってた。
愛の証、とか。

一体、何のことだろう? 一体何が……。

会社の中なら、大丈夫よね。
大丈夫。工藤さんだってみんなだっているんだし、何もできやしないわよ。
大丈夫。
胸元をギュッとつかんで、顔を上げた。