『華....』
『え、』
知らぬ間に声にしていた彼女の名前。
気づけば驚いた顔で俺の顔を見つめていて。
『友達の証に、華って呼んでもいい?』
まさか声に出ていたなんて思わず、咄嗟にそう口にした。
透き通るような声。
名前を聞いた瞬間に、どうしても名前を呼びたい衝動に駆られた。
まさか、本当に声に出して呼んでしまうなんて思ってなかったけど。
空を見上げながら涙を流していた華。
その姿はとても神秘的だった。
“桜並木”と“華”
これ以上の組み合わせがこの世の中にあるのかという程に。
入学式の翌日。
1時間目。
オリエンテーションを行う先生の話を聞きながら、俺は昨日の出来事を思い返していた。
俺の前に座る華。
名前が2文字違いで、席が前後で、誕生日も同じ。
そんな偶然があるのだろうか。
誕生日......か。
もうすぐ、俺と華は誕生日を迎える。