いつものようにおちょくることもせず、慰めの言葉をかけるでもない絹糸に代わって、セバスチャンさんが口を開く。


「表沙汰にはしないまでも、このまま放置というわけにはいかないでしょう」


 その、しっかりした理知的な口調のおかげで、あたしの暗黒思考がうまい具合に一時停止した。


 自分の両頬をパンパン!と思いっきり叩き、頭をブルブル振って気合いを込める。


 しっかりしろ、あたし! いまはウジウジ粘っこい思考に、とっ捕まっている場合じゃない!


 あたしがすべきことは、門川君をとっ捕まえることだ。


 恋する乙女なキモチに浸っている場合じゃない! あたしは神の一族の末裔であり、門川君の護衛なんだから!


「門川君の行方をみんなで探そう! そして、彼を見つけ出そう!」


 力強く提案したあたしに、凍雨くんが心配そうに聞き返してくる。


「でも永久様の置かれている状況が分からないのに、こっちが勝手に動いて、そのせいで永久様がピンチになっちゃうなんてことは……?」


「その可能性は、たしかにありますわね」


 慎重な表情で同意するお岩さんに、セバスチャンが答えた。


「ですが、可能性と言うのなら、その逆もありえます。なにも分からぬ現状では、すべては憶測の域を出ません」


「ならば我らは我らで、最良と思う手段を講じ、行動するしかあるまい」


 絹糸の言葉に、あたしは大きくうなづいた。


 行方不明の門川君が帰ってくるまで、なにもしないでノンビリ気長に待つことが、最良の手段とは思えない。


 誰かが行方不明になったら、そりゃ探すじゃん普通に。常識的にさ。


 勝手に動いたせいで、後から門川君に文句言われちゃうかもしんないけど……


 先に勝手なことしたのは門川君の方なんだもん!


『勝手なことしたヤツに、勝手なことを言われる筋合いはゴザイマセン!』って怒鳴り返してやる。


 ……ついでに2、3発、怒りの鉄拳をおみまいしてやろう。鼻のあたりをピンポイントに狙いすまして。