「皆、しばらくそのままで聞いてほしい」


 会議が終わって、帰り支度を始めた当主たちのざわめきを抑えるような、門川君のよく通る声が響き渡った。


 上段の間、中段の間、下段の間、合わせて数百畳もある大広間が一瞬で静まり返る。


 そして次の瞬間、各一族の代表全員が、申し合せたように息ぴったりにザザーッと平伏した。


 ……いやぁ~、いつもながら日体大の行進パフォーマンス顔負けのシンクロ率!


 この当主たちって、日頃から集団行動のトレーニングでもしてんのかな?


 そのわりに自分勝手な連中ばっかりで、集団行動できないヤツばっかりという不思議……。


「極めて私的なことではあるが、僕の立場上そうとばかりも言えぬので、この場を借りて発表したいと思う」


 しま子と一緒に、出入り口の襖のそばに正座しながら、あたしは門川君の座る高座の方向を見た。


 ん? 私的な発表? なんだろ?


「長らく待たせてしまったが、ようやく僕の花嫁が決定したので紹介しよう。……天内君、僕の隣に来たまえ」

「…………!?」


 シーンと静まり返った大広間の端っこで、あたしはピンと背筋を伸ばして硬直してしまった。