私は、叔母の家で散々甘やかされて、どうにか立ち上がって仕事に向かった。
「体力的にも、精神的にもこんなにきつい朝は、ないな」と私が呟いたら、叔母がこう切り返した。
「信じてたものに幻滅させられて、どうにか自分を誤魔化してやって来たけど、とうとう無理だって、離婚することに決めた日の翌朝に比べれば、きっとたいしたことないわよ」
叔母は、いつも私の先にいてこうしていつも手を差し伸べてくれる。
「これ以上辛いなんて、耐えられないよ。なのに、よく結婚しろだなんて言うのね」
「結婚自体は悪くないわよ。相手を間違えなきゃね」
「今でもそう思ってる?」
「ええ」
その言葉に、私も少しだけ元気を取り戻す。
「ごめんね、叔母さん辛かった時は、全く頼りにならなかったんだね」
「いいのよ。あなたは、そばにいてくれるだけで。嬉しいわ。だって、半分は私の子供でもあるのよ」
そっと抱きかかえるようにしてくれる。
その温かい手だけで、安心できる。
「うん」
前から思ってたけど、生真面目な母より大らかな叔母の性格の方が、自分に近い。
叔母が私を見て言う。
「それより、どうも話を聞いてると、今のあなたには、お見合いの話を進めるほどの度胸も、器用さもないと思うのは、私だけ?」
叔母の視線がまっすぐに注がれる。
「えっと、それは……」
私は、答えに窮してしどろもどろになる。
隠し事をしにくいのも叔母の方だった。
「まあ、いいわ。どんな気持ちにしても、結婚した方が私はいいと思ってる」
「ほんとうに?こんなに辛い思いをしても?」
「人生ってね、何かあって辛い思いをしても、何もしてこなかったよりはましだと思うの」
「そうですか」
私には、よくわからないけど。