ここは、都内の高級ホテル。

上質で落ち着いたインテリア。

ゆったりとした気分で、座り心地の良い椅子に腰かけて、
せわしなく行きかう人たちを眺めながら、
上品に着飾った人たちが、
優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいる。


高岡さんは、
「あの……葉子さん」と私の名前を言うと、姿勢を正して、まっすぐに私を見据えた。


「すみません、気の利いた言い方というか、回りくどい言い方には、苦手ですので許してください。
ですから、単刀直入に申し上げますが、葉子さんは、今すぐにでも結婚したいとお考えですか?」


あまりに唐突で、ストレートな言い方に面食らってしまった。


「すぐにでもって、どういう意味でしょうか?」
私は、なんて答えたらいいのか分からず、彼の顔を見つめたままでいる。


高岡さんは、口元に手を当てて、一度咳払いしてから言った。

「あの、ですから今年中にとか、来年には式を挙げたいとか。具体的にそういった希望がありますか?という意味なのですが……」

彼は、何と説明していいのか分からないというような、困った時の表情をした。

ああそうか、多分、お願いっていうのはこれだ。
彼は自分に、結婚したいっていう意思がないことを私に伝えたいのかな。

それだったら、母の耳に入ると厄介だけれども、正直に私の気持ちも話してしまった方がいいだろうと判断した。

高岡さんは、敏子さんにそんなことまで話したりしないだろう。