彼はイラついて体を起こすと、私から離れていった。

キッチンの方で、水道の蛇口をひねる音がする。

「ごめん。双方の親がお互いの娘と息子が結婚してくれるんじゃないかって期待しているの。だから……」私は、彼に聞こえるように声をかける。


「期待を裏切りたくないんだ。そういうこと?」

「ええ」拾い集めた洋服を身につける。

「結婚するつもりないんだろ?だったらいつかは、親に話さなきゃいけないんだ。それなら、早い方がいいに決まってる」


「そうね。その通りなんだけど」
ブラのホックを止めようとしてる私のセリフは、全然、説得力なく聞こえる。