ナツくんは、洞窟前の鳥居で私を待っていて。


息を切らしながら走る。

やっとの事で追いついたかと思うと、今度は「こっち」と洞窟を通り過ぎた森へと走って行ってしまった。

道すら施されていないただの森に一体何があると言うのだろう。

こんな草が生い茂った森、迷っちゃうに決まってる。

道なんか無いのに、ナツくんは迷うことなく真っ直ぐと進んでいく。


その姿を見失わないように草を退けながら必死について行った。


たどり着いたのは、水鏡湖とはまた別の湖だった。


湧いた水で出来た透明な水は、地の熱で温められぬるくなっていた。


「意外と深いんだ‥‥」


水鏡湖とまではいかないけど、人が溺れるには充分すぎる深さだった。


辺りに居るはずのナツくんはおらず、代わりに半分に割れた狐のお面だけが足元に転がっていた。



「まさかっ‥‥」



足が滑っちゃったりとかしてこの湖に落ちて溺れちゃってるとか無いよね?!